TDI（ディーゼル）

技術的にもTDIは進化し続けており、1989年に導入された最初のTDIエンジンと比べると、現在のものは、排気量あたりのパワー／トルクを大幅に向上させ、一方NOxやPMといった有害排出物に至っては、Euro 1規制に比較して95～98パーセントも削減することに成功しています。

アウディTDIの最大の持ち味は、卓越した燃費効率にあります。たとえばヨーロッパで販売されているAudi A4 35 TDI の燃料消費率は、100km走行あたりわずか4.3ℓ（EU combined）です。その一方で、もっともパワフルなTDIモデル、2016年初夏からヨーロッパで販売されているAudi SQ7 TDIに搭載されている4.0ℓV8 ユニットは、320kW（435PS）/ 900Nmの高性能を誇ります。

ヨーロッパではいまや、ディーゼルは必ずしも経済性重視の選択肢ではなく、スポーティで快適なパワーソースとしても、多くのユーザーに選ばれています。そうしたイメージ転換の大きなきっかけとなったのが、アウディによるTDIエンジンでのルマン24時間レース挑戦でしょう。アウディは2006年にTDIエンジンを搭載したレースマシンをルマンに初参戦させましたが、以来11年連続で挑戦を続け、5連覇を含む8度の優勝を飾っています。2011年以降は、TDIにエレクトリックドライブ機構を組み合わせたディーゼルハイブリッドのレースマシンを投入し、そのAudi R18 e-tron quattroでも、2012年から14年まで3連覇を達成しました。

アウディTDIが圧倒的なパフォーマンスを披露したため、ルマン24時間レースでのディーゼル搭載車に対する規制は、年を追って厳しくなっていきました。アウディは、それに対し技術開発で応え、レース用TDIエンジンの排気量あたりのパワーや、燃費効率を大幅に引き上げていきました。最新のTDIエンジンを搭載したアウディのルマン挑戦マシンは、2006年のモデルに対して燃料消費を46.4パーセントも減らし、その一方で、ラップタイムは10～15パーセントも速くなっています。

1989年のデビュー以降、TDIは環境性能と効率を絶え間なく向上させてきており、今後も、特に長距離を含むモビリティに強みを発揮しつつ、温室効果ガス（二酸化炭素）排出を抑えるのに有望なパワートレインとして、大きな役割を果たしていきます。


∗1 TDI時代を除いた、日本市場初導入アウディ製ディーゼルモデルは、1979年に発表されたAudi 100 L 5Dｓで、当時ヤナセより正規輸入されています。