《第45回東京モーターショー2017 アウディ プレスブリーフィング》
アウディ ジャパン株式会社 代表取締役社長 斎藤 徹によるプレゼンテーション
皆さま、おはようございます。本日は、東京モーターショーアウディブースにお越しいただき、誠に有難うございます。今年のモーターショーのテーマは、「Beyond the motor」ですが、まさに、前回のモーターショーからわずか2年の間に、1世紀以上にわたる自動車の概念を大きく変えるような変化が、目の前で起こっていると感じます。
エンジンからモーターへ、というパワートレインの電動化はもちろんのこと、最近のコネクティビティーや自動運転技術の目覚ましい進化は、私たちが長年親しんできた自動車に根本的な変化をもたらすことが明らかになってきました。
確かに、自動運転は、自動車の意味そのものを変えてしまうような進化です。クルマのシステムが人間に代わって運転という行為を引き受け、リアルタイムでクラウドと通信しながら、決してクラッシュすることなく、常に最も効率のよいルートで運転を行う。かつてはサイエンスフィクションの世界と思われていたオートパイロットが、2020年代のうちにも実現することが予見されています。
コンピューターの運転は、まだまだ信用できない、という慎重な方もいらっしゃるでしょう。ドライバーがいて、アクセルやハンドルを人が操作してこそ、クルマであるという自動車ファンも少なくありません。アウディは、もちろん、そうしたクルマを運転する行為の意味や愉しみを否定するものではなく、完全自動運転の時代になっても、操る楽しさのあるスポーティなクルマを作り続けるつもりです。
今回出展している新型Audi A8は、世界で初めてレベル3の自動運転システムを可能にしたクルマですが、自動運転に対するアウディの考えを少しお話ししたいと思います。まず、レベル3、レベル4といった定義は、あくまで技術的なカテゴリー分けであり、重要なのは、ユーザーにどういったメリットがあるのか、その使用形態だということです。
全世界で、12億台以上のクルマが走る現代社会においては、過密化する都市の渋滞はますます激しくなり、それによる事故や経済損失は増大しています。また、常に外界と繋がり忙しい毎日を送る現代人にとって、毎日の通勤路の運転や、都市間の長距離移動は、退屈で無駄な時間と感じられるでしょう。そうした状況では、自動運転システムが運転を代行すれば、そこで生まれた時間を、仕事や同乗者との会話、もしくはリラックスすることなど、ほかの有意義な活動に使えます。
アウディが新型Audi A8で、高速道路における渋滞時に、同一車線内での自動運転を行う「Audi AIトラフィックジャムパイロット」を開発したのは、渋滞中の運転に費やす時間を、ユーザーに有効に使ってもらえると考えたからです。アウディでは、こうして生まれるエキストラな時間を「25時間目」と呼んで、どのような過ごし方が可能で有意義か、研究を重ねてきました。
アウディは、自動運転技術は、一挙に飛躍的に進化するものではなく、段階的に進むものだと考えています。先月のフランクフルトモーターショーで、レベル5の完全自動運転のリムジンカーのAudi Aiconと、レベル4の高度な自動運転機能を持つコンセプトカーAudi Elaine conceptを同時にお披露目しました。
Audi Aiconは、アクセルもブレーキも、ハンドルもない、完全自動運転の車で、例えば、毎日の通勤や都市間の高速移動で使用するパーソナルリムジンです。個人もしくは、数人のためのファーストクラスの空間を提供するクルマと言っていいでしょう。しかし、航続距離800kmのEVであるAudi Aiconが現実のものになるには、まだ10年以上かかるでしょう。
一方、今回こちらでも展示しているAudi Elaine conceptは、2019年に生産を開始するアウディの2番目の電気自動車Audi e-tron sportbackのプロトタイプと言ってもよいクルマです。Audi Elaine conceptは、高速道路を時速130kmまで自律走行することができ、またガレージでは、バレーパーキングの代わりに、自動運転で自らスペースを見つけ、駐車します。 このように一定のエリア内や環境下では、ドライバーの介入の全く必要のないレベル4の高度な自動運転機能を搭載しています。Audi Elaine conceptは、500kmの航続距離を持ち、アウディ初のEVとなるe-tronに続いて、日本にも2020年までに導入する予定です。
そして、来年日本で発売する新型Audi A8は、「Audi AIパークパイロット」や「Audi AIガレージパイロット」といった自動運転機を含め40種類ものドライバーアシスタンスシステムを搭載します。レベル3の「Audi AIトラフィックジャムパイロット」の導入には、日本を含むほとんどの国で、システムがクルマに代わって運転することを認める法的な整備が必要ですが、アウディはそれに向けて、積極的な働きかけを行っています。アウディは、こうした自動運転技術が、事故を減らしてクルマの安全性を高めることはもちろん、人間を単調で生産性の低い作業から解放し、より自由な時間を生み出していくという、自動車のモビリティーの新しい可能性を信じているからです。
こうした自動運転のクルマには、高度なセンサーやコンピューターが搭載されており、AIとしての機能を進化させていきます。 近未来のクルマには、ドライバーのパーソナルアシスタントとしてAIが常駐し、クラウドと常時通信しながら、安全に快適に運行するだけでなく、ドライバーの気分や体調に応じて、音楽を選んだり、空調を操作したりして、ドライバーをあらゆる面でサポートするようになります。
こうしたことから、今回のアウディブースのテーマは、「Audi AI Experience」 としました。 来場されたお客様は、こちらのステージ上の新型Audi A8のシートに座って、Audi AIがイメージする新しい自動車を、映像や光のアートで体験することができます。新型A8の車内では、全く新しいタッチパネルを介した操作系もご体験いただけます。
新型Audi A8のもう一つのイノベーションは、量産モデルとして初めて、48ボルト電源をメインシステムとして標準搭載したことです。12kWの強力な回生エネルギーを生じるスターターオルタネーターを装備したマイルドハイブリッドシステムにより、時速55kmから160kmまでのコースティングや、時速22km以下でアイドリングストップが可能となり、燃費を100km走行あたり0.7ℓも削減しています。
また48V電源により、4つのモーターを駆動して、4つのホイールを個別に制御するアクティブサスペンション機構を世界で初めて搭載しました。例えば、側面からの衝突が不可避な場合には、衝突する側の車体を8センチ持ち上げることにより、衝撃を大幅に低減する機能を有しています。この48V電源とマイルドハイブリッドシステムは、皆さんの右手にあるAudi Q8 sport conceptにおいても、より強力な形で搭載されており、このモデルも2年以内に日本に導入予定です。このように、新型Audi A8、Audi Q8 sport concept, そしてAudi Elaine conceptは、もう目の前にある未来を体現しているモデルと言えるでしょう。
さて、クルマがこれからより便利に快適になる未来をお話ししましたが、最後に、そのもう一方の極にあるクルマを運転する愉しみについても触れさせて下さい。
アウディは、完全自動運転の時代が到来しても、人がクルマを操る楽しみをもったスポーツカーは決してなくらならないと考えます。EVになっても、私たちの五感を刺激するAudi R8のようなクルマは、存在し続けるでしょう。
アウディがそう信じる証拠のひとつが、ドイツメーカーとして初めて、今期からフォーミュラEにファクトリーチームとして参戦することです。また、Audi R8やAudi RS 3 Sedanによるカスタマーレーシングは、世界中で人気の高まりを見せており、日本でもSUPER GTやスーパー耐久への参戦の機会を提供しています。
昨年から本格的に展開しているアウディスポーツのモデルとしては、今年Audi RS 3 Sedan、Audi RS 3 sport backや、Audi RS 5 Coupéを発表いたしましたが、来年は今回展示している新型Audi RS 4 Avantを発売します。アウディが新開発した2.9ℓ 450馬力のV6エンジンを搭載し、0~100kmをわずか4.1秒で加速するスーパースポーツ並みの性能を持つAudi RS 4 Avantは、まさに羊の皮をかぶった狼と言えるでしょう。
AIによる高度な自動運転から、サーキットにおけるスーパースポーツまで、クルマは私たちにこれまでにないほど拡がりのある多様な世界を提供しています。その先にある未来を信じて、アウディはこれからも先駆けて跳躍する、Vorsprungすることを続けていきたいと思います。
ご静聴、有難うございました。