2022/03/11Press Releases

極寒ラップランドでの極秘試験走行(ドイツ本国発表資料)

  • スウェーデンの試験場 KALT 1 でドライビング特性開発者担当に密着
  • 雪や氷で覆われた路面でアウディの新型モデルをチューニング
  • アウディのDNAに向かって一歩ずつ前進:アウディならではのドライビング特性までの長い道のり

(ドイツ本国発表資料)

2022年3月9日、インゴルシュタット/ラップランド:大型冷凍庫の中にいるような低い気温、確実に存在する雪、広く路面に張った氷。スウェーデン北部は、アウディの新型モデルを過酷な気象条件の下で調整を行うにあたり最適なコンディションがそろっています。開発者ラファエル キスが、一般には開放されていない極北のテストコースと、そこで行われる作業について、その一部を公開してくれました。


ラファエル キスがホテル前の通りに足を踏み入れると、足元の雪がざくざくと音を立て、雪の上には真新しい足跡が残りました。冷たい空気が張り詰める1月の朝、気温計はマイナス21度を示しています。ホテルの外では、数百メートル先のテストコースで、除雪車が低い音を響かせながら凍った湖に積もった新雪を除雪、テストコースを準備しているのが聞こえます。ラファエル キスは黒のニット帽を顔まで深く下げ、スウェーデンのまだ薄暗い道をワークショップに向けて、ゆっくりと雪を踏みしめて歩きはじめました。ワークショップはすぐそこ。「ホテルからそのままワークショップに直接降りていく感じですね」とキスは言います。時刻は午前7時。アウディのキャリブレーションエンジニアとして、安定性や駆動力などドライビング特性のチューニングを担当するキスの一日が始まります。

外界から隔絶された施設
ワークショップは、スウェーデンにあるフォルクスワーゲングループの広大な試験場(機密性を保つため単に KALT 1と呼ばれる)の敷地内にあります。ラップランドにあるこの試験場は、周りをフェンスで完全に囲まれた極秘施設で、ここでアウディの次世代モデルの氷雪上のキャリブレーション(基本調整)が行われています。試験場の総敷地面積は、フランクフルト空港の約1.7倍に相当する3,600ヘクタール以上あります。敷地内には、オフィスが併設されたいくつかのワークショップとベッド数440のホテルとともに、総延長83キロの寒冷地コースが設けられています。

最寄りの大きな町から数百キロ離れ、スーパーも徒歩圏内にはありません。それでも、平均して約150人が滞在するアウディの従業員たちが困ることはありません。不便のないように整えられた就業条件には、ホテルのレストランでの3食、トレーニングルーム2室、ホテルバーも含まれています。「ここでは大勢の人と一緒に過ごすことになります。それが好きだということが条件ですね。そうでないと、長くは我慢できないでしょう」と話すラファエル キスは、年間20週ほどのこの仕事を14年続けていますが、その内毎年約10週間をスウェーデンで過ごしています。

スウェーデンの冬でファインチューニング
今朝、キスはワークショップのオフィスの椅子に座り、アウディの新型モデルのファインチューニングの準備をしています。息子が幼かった頃、「パパは皆が安全に乗れるようにクルマを調節しているんだよ」と自分の仕事を説明していたようです。実際には簡単な話ではありません。キスは「一日中コースをぐるぐる走っているだけだと思われがちですが、そうではありません」と言って笑いました。ときには車両で新しいソフトウエアを実行する必要もあれば、エキスパートがハードウエアを調整しなければならないこともあります。車両のキャリブレーションには1年以上、通常はひと冬半を要します。キスはチームと共に、理想的にはドライな路面でベースラインを設定し、基本的なハンドリングを調整します。その後、11月後半にスウェーデンでの冬季走行が始まる前に、ウェットな路面で試験走行を行います。最終的には、路面がドライ、ウェットのどちらでも、さらには路面に氷雪があっても、バランスのとれた走りを実現できなければなりません。「ABS、ASC、ドライビングダイナミクスコントロールが、アウディのDNAに合ったものでなければなりません」とキスは説明します。アウディでは、独自のハンドリングを特徴づける、特定の基準を満たすものをDNAとして捉えています。

キスによると、スペインのドライコンディションでのキャリブレーションが2月に予定されており、その後スウェーデンでそれに対する比較走行が再び実施されるなど、常に相互調整が続くとのことです。新型モデルのハンドリングは、山道や峠道で一年をかけて調整されます。「各種ロードプロファイルは、可能な限りお客様に沿ったものであるべき」で、来冬にはサスペンションのエキスパートたちによる最終的なファインチューニングが行われる予定です。

ノートパソコン上での調整
窓の外では、ワークショップの明かりに照らされ、大粒の雪が舞い降り続けていました。「スウェーデンの12月と1月は暗く、かなりつらいですね」とキスは話します。当日の日の出は午前9時でしたが、午後2時には再び日が沈んでいました。キスは、3月と4月には、この北の王国に美しい季節がやってくると教えてくれました。太陽と青い空が、テストコースを幻想的な冬景色に変えるそうです。「でも、暗さにも慣れるものです。ルーフに装着したヘッドライトでどの道路も十分に明るくなります」と言いながら、キスはノートパソコンを抱え、デスクの上にあった車のキーを手に取りました。

彼のノートパソコンは、カモフラージュフィルムで覆われた車両の助手席に設置されたブラケットにしっかりと収められていました。目標の特性に徐々に近づけていくため、パソコン上で各種パラメータを変更します。アウディは、限界領域も含め、容易にコントロールできなければなりません。すべての制御システムが、目の前の走行条件にしっかりと対応できる必要があります。優れたトラクションも、アウディの特徴のひとつです。EVが登場しても、これまでのチューニングには基本的な違いはありません。

厚い氷の上でいつもの走行
キスが試験場で次に向かったのは、凍った湖の上のコースでした。保存されたGPSデータに基づいて毎年同じカーブを描く、総延長約3キロのコースです。早朝に除雪された雪が路肩に積まれています。岸辺の針葉樹は雪の重みに耐えかねてきしみ、枝が垂れ下がったままになっています。この凍り付いた路面に、アウディはどのように反応するのでしょうか。キスがペダルを踏み込むと、車両は左側の最初のカーブへと向かいます。車両がカーブをドリフトして駆け抜けると、雪の粒が凍てついた空に2メートルほど舞い上がりました。「仕事が本当に楽しいのは、こういう瞬間です」とキスは言います。ハンドリングのスペシャリストであるキスは、データが十分にそろうまで、いつものようにコースを数周走りました。

氷が車両を支えきれなくなることを心配する必要はありません。シーズンの初めに、スノーモービルで出動するチームが氷の厚さを計っています。車が走行するには、少なくとも25~30センチの厚さが必要です。氷が薄い場合は、ホバークラフトで表面の雪を何度も押し出します。雪には保温効果があるため、そうしないと氷が厚くなるのに時間がかかってしまうからです。こうした努力の結果、氷は最大90センチもの厚さになります。

計測結果の分析
ワークショップに戻ります。ホテルのレストランで昼食をとった後の予定は、機能開発担当者とシステムパートナーと計測結果の分析。キャリブレーションにはある程度個人的な感性も認められますが、キスは開発チームのリーダーや他の同僚たちと、そのモデルが目標とする特性について事前に話し合います。意見のニュアンスは人によってさまざまです。キスは「例えば、もう少しオーバーステアにした方がいいのではないか、という意見をもつ人がいたりします」と言いつつ、「最終的に、どのような挙動に落ち着かせるかについて、全体としてほぼ同じ理解を持っています」と話しました。

キスが椅子にかけたジャケットを手に取り、帽子をかぶったときには、試験場は再びすっかり暗闇に包まれていました。10時間に及んだ一日も終わりです。「夕食、同僚との雑談、自宅へのビデオ電話。そしてまた明日です!」と言い、キスは緑色に光るホテルのロビーへと消えていきました。

※本リリースは、AUDI AG配信資料の翻訳版です。

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