● Audi A3 Sportback g-tronは、CO2ニュートラルなAudi e-gasを燃料に使用
● CO2エミッション 30g/km
● 最大走行可能距離 1,300km
アウディは、Audi A3 Sportback g-tron(ジートロン)の開発を通じ、持続可能なモビリティを大きく前進させました。2013年末にデビューが予定されているAudi A3 Sportback g-tronは、CO2ニュートラルなAudi e-gas(イーガス)を燃料に使用しています。このガスは、ドイツ国内ヴェルルテの工場で生産されます。Audi A3 Sportback g-tronは、環境のバランス、経済性、そしてハイテクを駆使したソリューションを革新的に融合させたモデルです。
Audi A3 Sportback g-tronは、軽量化技術等これまでのあらゆる研究結果を盛り込み、ドライバーアシスト技術など、アウディが持つ最先端技術の総力が結集されて誕生しました。多くの最先端技術の中でも、もっとも重要な部分を担っているのは、燃料タンク製造を始めとする最新鋭のCNGドライブテクノロジーです。ラゲッジコンパートメントの床下に収納される2本の燃料タンクには、1本あたり7kgのガスを最大200バールの圧力で充填することが可能です。アウディの軽量化技術を応用して作られた新型燃料タンクは、従来型のタンクに比べて27kgもの軽量化が図られています。
新型燃料タンクは、これまでにないまったく新しい構造となっています。タンクは3重構造で、もっとも内側にはガスを一切通さない性質を持つポリアミド ポリマーを採用しています。その外側に、非常に堅牢な性質を持つ、ポリマー強化材配合のカーボンファイバー(CFRP)製の層があります。さらにその外側に、外からの衝撃への耐性に優れた、ポリマー強化剤配合のグラスファイバー(GFRP)製の層が設けられています。これらの各層の接着には、非常に耐久性の高いエポキシ レジンが用いられています。
Audi A3 Sportback g-tronに採用された電子制御式ガス圧レギュレータも、注目されるべき最先端技術です。軽量かつコンパクトに設計されたこの装置は、高圧で保存されているガスの圧力を、状況に応じて5〜9バールに減圧してエンジンのシリンダーに供給します。中低速度域で低燃費な運転をする時には低めの圧力で、より多くのパワーやトルクが必要とされる運転の時には圧力を高める等の調整を行うことにより、インジェクターバルブからは常に最適な圧力のガスが噴射されます。
燃料タンク内のガス圧が10バールを下回った場合、エンジンマネージメントシステムは自動的に使用燃料をガソリンに切り替えます。CNGモードとガソリンモードのどちらで走行した場合でも、Audi A3 Sportback g-tronはまったく同じパフォーマンスを発揮します。
標準的な燃費を基に計算した場合、CNGモードでの最大走行可能距離は400kmで、ガソリンモードでの最大走行可能距離は900kmに達します。これらを合わせた最大走行可能距離は、アウディTDIエンジン搭載モデルとほぼ同じ性能です。各タンクの残量は、メーターパネルに設置される2つのインジケータに、リアルタイムで表示されます。さらに、各モードで走行中の瞬間燃費情報が、ドライバーインフォメーションシステムに表示されます。
ガス充填用のバルブは、通常の燃料給油口の下に配置されています。ガス充填直後ならびに冷感時、エンジンはガソリンモードでスタートします。その後、可能な限り早いタイミングでCNGモードに自動的に変換されます。
Audi A3 Sportback g-tronに搭載されるエンジンは、新型1.4L TFSIエンジンをベースに開発されました。ベースエンジンからの主な変更点は、シリンダーヘッド、ターボチャージャー、インジェクション システム、触媒コンバータなどです。このエンジンの最高出力は81kW(110hp)、最大トルクは200Nmで、Audi A3 Sportback g-tronは、最高速190km/h、0-100km/h加速11秒という性能を発揮します。CNGもしくはアウディe-gasプロジェクトによって省電力方式で生産されるAudi e-gasによる走行での平均燃費は28.57km/kg(3.5kg/100km)以下で、エグゾーストエンドからのCO2排出量は95g/km以下となっています。
Audi A3 Sportback g-tronによる温室ガス削減効果は、燃料の生産から車輌での走行までの、すべての過程を考慮すると、より一層高くなります。Audi A3 Sportback g-tronにAudi e-gasを充填して使用した場合、他の化学的合成によって造られたガスを使用した場合に比べて、CO2排出量はより少なくなります。e-gas製造工場で使用されるエネルギーに風力発電で得られる電力が使われることを考慮すると、Audi A3 Sportback g-tronによる総合的なCO2排出量は30g/km以下となります。
Audi A3 Sportback g-tronのユーザーは、通常のCNGガスステーションで、既存のエコ電力がそうであるのと同様に、手軽にAudi e-gasを入手することが可能です。
アウディはe-gasプロジェクトを成功させたことで、持続可能なエネルギー連鎖のすべてに関与する初の自動車メーカーとなりました。エネルギー連鎖の始まりは、再生可能エネルギーによる電気の生産です。そして最終的に水素およびAudi e-gasを精製します。CO2と再生可能電力を使用してメタンガス(e-gas)を生み出す世界初の生産設備は、ドイツ国内のヴェルルテ(ニーダーザクセン州、エムスランド郡)にまもなく完成します。
Audi e-gas生産工場において作られた再生可能電力は、水から水素(Audi e-hydrogen)と酸素を取り出す行程で使用され、フューエルセルカー全体の1日分の使用量に相当する水素を生産します。残念ながら、フューエルセルカーの普及は未だ広範囲に達している状況ではありませんので、この過程で精製された水素の一部は、メタン精製工程でCO2と化合され、再生可能化学合成メタンガスまたはAudi e-gasにされます。こうして生産されたe-gasは、化学的に見て化石燃料である天然ガスとまったく変わりません。そのためAudi e-gasは、既存の天然ガス供給ネットワークを経由してCNGガスステーションに搬送することが出来ます。
このおかげで、電力供給網とガス供給ネットワークが初めて双方向リンクを実現しました。従来は、ガスから電気を製造することは可能でしたが、その逆は不可能とされてきました。それ故にAudi e-gas生産工場は、これまでは供給過剰であった電力をその保存に対する膨大なキャパシティを誇る天然ガスネットワークに転換して活用するという新たな道を創造したのです。
Audi e-gas生産工場で使用されるCO2は、近隣に位置する公共エネルギー生産事業体・EWEが運用するバイオガス生産工場から排出されるものを利用しています。これまで環境への悪影響が懸念されていたCO2は、Audi e-gas生産工場で燃料に生まれ変わります。およそ1,000tのe-gas生産に対し、約2,800tのCO2が使用されます。このCO2量は、22万4,000本のブナの木が1年間かけて吸収する量に相当します。
ヴェルルテの工場から1年間に生み出されるCO2ニュートラルなe-gasは、1,500台のAudi A3 Sportback g-tronを15,000km走らせることを可能にします。この工場は、風力や太陽光から発電された大量の再生可能電力を効率よく場所を選ばずに保存を可能にする方法の確立に向けて、持続的にチャレンジし続けてきたアウディe-gasプロジェクトの成果を存分に表しています。
アウディが開発した、電力からガスを造り出す技術は、再生可能エネルギーの発展を著しく促進させることになるでしょう。